2018年12月14日金曜日

アニメの労働環境おそるべし+ミッキーマウスのストライキ (2015/3/14)

 濱口桂一郎さんのブログ。アニメ産業の労働問題を取り上げている。トム・シート『ミッキーマウスのストライキ アメリカアニメ労働運動100年史』の訳者久美薫さんの投稿に濱口さんが応えての紹介だ。

 何が重要かというと,久美さんはこの本の訳者解説「アニメーションという原罪」をネットに全文公開していて,このブログからリンクが貼られている。この訳者解説が,実は「戦後アニメ産業労働問題史」になっているのだ。見つけたら,あまりの迫力に思わず読みふけってしまった。

 『鉄腕アトム』の製作費が安すぎたことは有名だが,『オバケのQ太郎』,『アルプスの少女ハイジ』,『ミラクル少女リミットちゃん』『うる星やつら 乙女バジカの恐怖』などの作品製作過程で何が起こっていたか,高畑勲,宮崎駿,大塚康生らの大家たちは労働問題にどう関わってきたかが掘り下げられている。こういう話題では必ず出てくる「アニメーターは本質的にミュージシャンなどと同じ自営業です」「ラーメン屋がスープ仕込むのに何時間と営業時間外も働いてて『残業代』と言う奴いるか」などの言説もとりあげて論じている。しかも,ただの告発ではなく,業界の構造にどういう問題があるのか,アメリカのように労働組合が強くならないのはなぜなのか,下請けとフリーランス化はどのようなロジックで進められているのかなど,問題を考えさせる叙述になっている。

 アニメ産業に関心ある方,まずこの訳者解説を読んで損はないと思います。

濱口桂一郎「日本のアニメ産業環境は厳しいのではない。”違法な劣悪環境”である。」hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳),2015年3月。


2015年3月15日追加。トム・シート(久美薫訳)『ミッキーマウスのストライキ! アメリカアニメ労働運動の100年史』合同出版、2014年。買ってみたら、ピケティとほぼ同じ厚さ。

出版社のページ。
http://www.godo-shuppan.co.jp/products/detail.php?product_id=438





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