2019年1月16日水曜日

1969-70年代の東北大学学生運動に関する2論文を読んで (2017/2/11)

 私が入学する数年前まではもう歴史になったか。1本目の論文はa)1969年の大学臨時措置法と教養部封鎖問題,2本目の論文はb)1969-71年頃の経済学部などでの学部長選挙への学生参加問題,c)1972年10月以後の教養部サークル棟移転問題,d)その延長線上にある1975年の処分問題とそれをめぐる全共闘系学生運動の暴力化をとりあげている。加藤氏は名誉教授が保管されていた文書を史料として用いているので,文書に収録されていなかった話題は取り上げられていない。例えば,教養部でa)とd)の間に起こったe)1972年前半の学費値上げ反対無期限ストと大量留年問題や,経済学部でb)の背景となったf)経営学科設置問題だ。

 2つの論文は当時の学生運動の状況をよく再現していると思う。ただ,細部は十分ではないところもある。例えば,私の知る限りd)の事実関係は,途中から不鮮明であり,たぶん誤認もある。これは使用した史料の限界だろう。教養部教授会議事録や配布資料を総ざらいすれば違っただろうが,史料館の教員と言えどもアクセスできなかったのかもしれない。また,関係者はまだ多数お元気でいらっしゃるのだから,ヒアリングで資料を補えばもう少し細かく書けたようにも思うが,そうすると今度は多数の人がそれぞれに異なる立場で証言することが予想され,きりがなくなると判断されたのかもしれない。

 著者が史料館においでならば,そのうちお会いできるかと思ったが,東京大学文書館に移られてしまったようだ。

2019/1/16追記。また東北大学に戻られたようだ。

加藤諭「1969年における東北大学の学生運動 : 豊田武教授収集資料を通じて」『東北大学史料館紀要』第7号,2012年3月。

加藤諭「1970年代における東北大学の学生運動」『東北大学史料館紀要』第9号,2014年3月。



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