2019年2月20日水曜日

東日本大震災後1か月の仙台での被曝量を求めて(2013/9/10)

 2011年4月。私は「本震後も仙台に住んでいて、おおよそどれくらい被曝したと考えればよいのか」という疑問を持っていた。当然、周囲の同僚や学生も持っていた。しかし、毎日これでもかというくらいに放射線について報道されている割に、この単純な質問に対する答えはどこにもなかった。「使えない」報道だと腹が立った。しかし、素人に計算できるわけもないと思っていた。

 ところが、ある日、放射線医学総合研究所のサイトに、東京に1か月暮らした場合の簡便な被曝量計算方法が掲載されたことに気が付いた(※)。まったく同じ方式と、対応する地元のデータを使えば、それほどまちがわずに仙台についても計算できるのではないかと考えた。そこで何度か放医研に電話して、大きなまちがいがないように気をつけながら試算した結果がこうである。

3/13-4/12の仙台市における、福島第一原発事故による総追加被曝量(放医研に相談しながらの素人計算)

注意:自然放射線に対するプラスアルファの被曝分に限って計算。

1.空間放射線からの外部被曝 0.066ミリシーベルト
・データ出所:理学研究科田村教授が仙台市青葉区で測定。

2.水・食べ物からの内部被曝 0.255ミリシーベルト
・データ出所:水と野菜は宮城県のサンプル調査のうち、放射能が最大のもの。魚は県内データなく、放医研のもの。

3.放射性物質吸引からの内部被曝 0.0363ミリシーベルト
・データ出所:残念ながら地元データがなく、放医研の東京の大気のデータを流用。

*合計(1+2+3)
 0.358ミリシーベルト(四捨五入の関係で上記合計と0.001の差)

 これは、胸のX線集団検診(0.05)より多く、胃のX線精密検査(0.6)より少ない程度、または東京・ニューヨークを 2 往復した場合に宇宙線を余分に浴びる最大値(0.38)より少し少ない程度である。私は「今後、原発事故が徐々にであっても収束に向かうのであれば、仙台に住むことは放
射線防護の観点からはまったく心配ない」と判断してゼミ生にそう伝えた。

 何の根拠もなく「安全だ」「危険だ」とは言いたくなかった。だからこの試算をしてゼミ生に送ったことは今でも正しいと思う。しかし、素人計算が間違っていたらどうするのかと思うと、とても恐ろしかったことも事実である。いまでも恐ろしさがなくなったわけではない。いまさら私の試算値で不安に駆られる人もいないだろうと思うので公表するが、まちがいがあると思う方は、遠慮なくご指摘いただきたい。計算方法を教えろと言う方には無論お教えする。

 後日、原発問題のシンポジウムの後、放射線を仕事で扱っている理系の先生方にうかがうと、「だいたいはそれでよい。しかし、自分たちは、たいへん低い確率で特定の人が深刻な健康被害を受ける可能性があることを知っているので、危険はないと断定できないのだ」と言われた。またそのシンポジウムで原子力工学の先生は、原子炉の状態については明快に説明してくれたが、被曝の話になると「私、放射線については弱いので……」と困った顔になり、新聞報道と同様の解説だけを紹介された。これらは、いずれも科学的には正しく、学問に誠実な態度なのであろう。専門的に厳密に話したい、専門外のことに口を出さないという姿勢である。

 しかし、正確さが保証されなければ何も断言しないということは、いつでもどこでも正しいのだろうか。ある状況で、ある責任を負っている場合には、誤差がかなりあり、専門的にはまちがいを含むかもしれないとしても、その危険性を認め、さらに手元でできる限りの正確さを期したうえであれば「○○の理由で、だいたいこうです」と言わねばならないとき、言わねばならないこともあるのではないだろうか。

 この経験以来、私は原発にかかわる事柄について、いつでもどこでも同じことを言う態度はとれなくなり、また短い一言で「危険だ!」「安全だ!」ということもできなくなり、さりとて「科学的に確かめられていないことを主張したり、専門知識のない分野で主張したりするな」という自然科学者の意見にも、直ちにはうなずけなくなったのである。

※放射線医学総合研究所「放射線被ばくに関する基礎知識第6報」2011年4月14日(現在公開のバージョンは8月24日更新)。

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