2019年2月10日日曜日

手塚治虫先生が亡くなられた日 (2018/2/9)

 1989年2月9日。私は大学から帰って築30年(推定)のボロアパートで「ニュースステーション」を視ていた。突然,画面が白黒になって「空を超えて~」という歌をバックに「鉄腕アトム」のアニメ画面が。ギクリとしたが,案の定,小宮悦子さんが手塚治虫先生が亡くなられたことを告げた。
 
 子どものころ,私にとって「先生」とは手塚治虫先生と藤子不二雄先生だった。家にあったカッパコミクス版『鉄腕アトム』が私にとっての未来であり,虫コミックス版『オバケのQ太郎』が私にとっての今だった。この世界と続いているすぐそばの世界。ロボットやオバケと友達になれる世界にわくわくした。それだけに,『アトム』でロボットと人間のシビアな対立が描かれ,アトムが破壊される「青騎士の巻」は衝撃で,おそろしくてめったに読み返せなかった。とくにカッパコミクス版は青騎士の巻で終わっており,壊れたアトムを抱えてお茶の水博士が科学省に向かうところで終わっていた。私は『アトム』はこの悲劇で幕を閉じたのだと思っていたのだ。その後にアトムが復活するのだと知ったのは,何年か後にサンコミックス版に触れてからだった。

 『アトム』で最も印象的なセリフは,「人工太陽球の巻」に搭乗する英国諜報部員ホームスパンのものだ(ホームズと007が混じっている?)。彼は事件調査大けがをして頭脳以外はすべて機械になっているが,自分は人間だということに誇りを持ち,その反面ロボットをひどく嫌っている。アトムとの交流で考えを変えていくが,事件の最後に負傷して頭を打たれ,頭脳も機械化してロボットになってしまうのだ。彼は回復して新聞記者に語りかける。

「私をロボットと呼ぶなら呼ぶがいいよ。しかし私は…」
「ロボットになれたことを誇りに思うくらいだ」
「それはロボットがどんなにりっぱなものかということを知ったからだ」
「それは手術をうけるずっと前,アトムくんによって教えられた……」
「人間のように欲ばらずいばらず,ただ正しいことのためにつくすロボットたち」
「諸君,私はよろこんでロボットの仲間に……」

カッパコミクス版とはこんな感じのものです。
「光文社カッパコミックス版『鉄腕アトム』全32巻表紙集」『昭和otaku画報』ウェブサイト。
http://www.gahoh.net/enta/atom/index03.html

「手塚治虫について:プロフィール」手塚治虫オフィシャルサイト。
http://tezukaosamu.net/jp/about/

0 件のコメント:

コメントを投稿