2019年2月10日日曜日

妙に親近感の湧く,吉田裕『日本人の戦争観』(2013/12/9)

 吉田裕教授は、まっすぐなリベラル派歴史家の代表のように思われていますが、子どものころは軍事マニアだったそうです。メディア、とくに軍事マニアの雑誌(『丸』とか)に日本人の戦争観の変化を読み込んで分析した『日本人の戦争観』岩波書店、1995年はたいへん面白い本でした。

 というのも、実は、私も小学生のころ軍艦マニアだったからです。高城肇『軍艦』(少年画報社,1962年)という本を小学校近くの子ども文庫で借りて、「哀れな戦艦、山城」とか「不思議な空母、瑞鶴」とか「突っ込め!防空駆逐艦秋月」などの話に夢中になりましたし(※)、小学校の図書室にあった伊藤正徳『太平洋海戦史』(おそらくあかね書房から出ていた少年少女20世紀の記録というシリーズ)も何度も読みました。親もまあ、左翼なのに寛容なものでプラモをずいぶん買ってくれました。その時に覚えた感覚は、吉田教授もある時期の戦記物の傾向として指摘した「海軍=知的で平和愛好、陸軍=ひたすら好戦的」という史観であり、山本五十六連合艦隊司令長官を極度に高く評価するものでした。いまではそういう考えから遠ざかっているものの、そう思いたくなる気持ちは何となくわかるつもりです。

 日本人は、なぜ日本軍をめぐる物語に惹かれてしまうのか。それを考える上で、『日本人の戦争観』は思想の左右を問わずおすすめできる一冊です。いまでは岩波現代文庫に入っています。

※2019年2月10日。書誌情報等を微修正。

吉田裕(2005)『日本人の戦争観:戦後史の中の受容』岩波書店。

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