2018年11月8日木曜日

科研費に介入する自民党と、それを煽る『産経』 (2017/12/19)

「徴用工をめぐる韓国側の主張に同調する研究者らに文科省などが助成金を交付していたことを伝えた産経新聞の報道(13日付朝刊)を受け、党文部科学部会は14日、文科省幹部を呼び説明を受けた。珍しく迅速な動きを見せたが、今後も激化する歴史戦に対応できるかは見通せない」(『産経ニュース』2017年12月14日)。この助成金とは科研費のことだ。『産経』は、政府の方針に疑問を呈する研究には科研費を交付するなと言いたいのだ。

 ことは重大だ。学問は特定国家の特定の時期の政権の都合のためにあるのではない。研究の結果,日本で安倍政権に都合の悪い結果が出ようと,アメリカでトランプ政権に都合の悪い結果が出ようと,中国で習近平政権に都合の悪い結果が出ようと,ロシアでプーチン政権に都合の悪い結果が出ようと,北朝鮮で金正恩政権に都合の悪い結果が出ようと,韓国で文在寅政権に都合の悪い結果が出ようと,学問の問題は,真実であるかどうか,それだけだ。そして,真実でないとしても,それも学問的批判によって証明されねばならず,弾圧や兵糧攻めで追い込まれてはならない。
 なぜか。国家は,政権に反対するものを含めた学問の自由を守り,言論や表現の自由を守らない限り,自由で民主的な社会の外枠となることはできないからだ。国家が真実を独占的に解釈しようとすれば,その社会はもはや自由でも民主的でもないからだ。国家は社会の外に立って社会を絞め殺す機構になってしまう。

 自由民主党の名称が示す「自由」と「民主」とは何か。自民党はどういう日本国家をつくりたいのか。『産経』は,研究者と大学に,学問の自由を捨てて特定政権の一時の,特定の主張に身をゆだねて宣伝部隊になれというのか。


「13日付け朝刊」の報道とはこれだ。東大の外村大教授,京大の水野直樹教授,立命館大の庵逧准教授の研究が科研費を獲得したことを「反日」の動きとみなしている。
「【歴史戦・第19部 結託する反日(中)】「徴用工」に注がれる科研費 前文部科学事務次官の前川喜平氏は韓国と同調」『産経ニュース』2017年12月13日。
http://www.sankei.com/world/news/171213/wor1712130007-n1.html

「自民党、目立つ鈍感ぶり 安倍晋三首相『サンフランシスコは失敗だった…』」『産経ニュース』2017年12月14日。
http://www.sankei.com/politics/news/171214/plt1712140031-n3.html

2017/12/19 Facebook
2017/12/28 Google+

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