2018年10月22日月曜日

ベトナム中部における魚の大量死第11報:政府が調査結果を発表し,FHSが原因と断定。FHSも責任を認め謝罪 (2016/7/1)

 ベトナム中部における魚の大量死問題第11報。新展開。台湾資本のフォルモサ・ハティン・スチール(FHS)は,魚の大量死に関する自社の責任を認めて謝罪し,5億ドル(11.5兆ベトナムドン)の補償金を支払うと発表した。
 シェア先のThan Nien Newsはベトナム国営メディアであって政府のコントロールが入る恐れはあるが,記述が最も詳しく,FHSの謝罪会見のYoutube動画が含まれている。動画では,FHSの陳董事長が中国語で謝罪しており,ベトナム語の音声と字幕,さらに英語の字幕が付いており,意味はとりやすい。
 同紙の記事によると,政府の調査チームは,30日午後ハノイにおいて記者会見を行った。調査チームによると,排水に含まれたフェノール,シアン化物,鉄水酸化物が魚を殺した。排水の源はFHSである。そして,FHSは6月28日に「深刻な環境汚染事件」に対する責任を認めた。調査チームのズン(Mai Tien Dung)氏は,もしベトナムの環境保護規制を再び破ったら,FHSは法的に罰せられるだろうと語った。
 FHS会長の陳源成董事長は,試運転の際に下請け会社が操作を誤って魚を殺す結果になったことが調査で判明したと語った。
 またNew York Timesの記事によれば,ハティン省のFHS社代表が電話取材に応じ,政府の調査によって適切な措置に反したことが発見されたが,その違反とは何であったかは同社は知らされなかった。
 政府は,FHS社からの補償金は被害を受けた地域の漁村を支援するため,仕事を失った漁民に職業訓練を行い,海洋環境を復旧させるために使われると発表した。
 さらにNikkei Asian Reviewによれば,FHS社のChang Fu-Ning上級副社長は,残念なことだが政府の調査結果を尊重する,「現時点では,この件を解決する以前には,鉄鋼プロジェクトがフル生産に至るタイムテーブルは決められない」と語った。
 種々検討を要するが,現時点での私の判断としては,海外の研究者も加わって出された政府の調査結果がまったく虚偽ということはないと思う。FHSの排水には実際に問題があったのであろうし,その責任は免れないだろう。政府による原因の公表と,FHS社による公的な謝罪と補償に至ったのは,事態をうやむやにして公害を放置するよりははるかにましな事態と言える。
 ただ,法的にはどのような責任になるのか,原因の科学的分析結果が公開されるのか,どの工程の試運転が原因で,どんな過失があったのか,再発防止策はどのようにとられるのか,FHS社に対する脱税の疑いと本件は政治的に関係づけられていないのか,事態をあいまいにしたままでの政治的妥協はなかったのか,類似のことが生じた時に情報公開が遅れない保証はどうつくられるべきかなど,検討すべき点はまだ残っている。同様の公害を再び繰り返さないためには,これですべてが終わったと見るべきではないだろう。

”Formosa unit owns up to fish kill disaster, commits to $500 million compensation," Thanh Nien News, June 30, 2016.
http://www.thanhniennews.com/society/formosa-unit-owns-up-to-fish-kill-disaster-commits-to-500-million-compensation-63688.html

Richard C. Paddock, "Taiwan-Owned Steel Factory Caused Toxic Spill, Vietnam Says," The New York Times, June 30, 2016.
http://www.nytimes.com/2016/07/01/world/asia/vietnam-formosa-ha-tinh-steel.html?_r=0

Atsushi Tomiyama, "Formosa Plastics fined $500m over toxic waste in Vietnam," Nikkei Asian Review, June 30, 2016.
http://asia.nikkei.com/Business/AC/Formosa-Plastics-fined-500m-over-toxic-waste-in-Vietnam

2016/7/1 Facebook
2016/7/3 Google+

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