2018年10月31日水曜日

デービッド・アトキンソン氏の「生産性」論の真意を考える (2018/4/20)

 アトキンソンさんは「生産性」だけをスローガンとして前面に出しているが,それが彼の真意をわかりにくくしていると思う。実はその前に賃上げをして,経営者にとって,生産性を上げて利潤を確保するしかない状態をつくり出すと言っているのだ。これならば,需要におしあげられて供給も伸びるという関係ができる可能性が高まる。ただ,前回コメントしたように,生産性の上げ方には注意を要する。つまり,もっぱら労働者を減らし,同じ財・サービスを低コストで作った場合,雇用は減り,需要は減退するだろう。他方,人減らしはせずに財・サービスをローコスト化して値下げで市場を拡大し,価格低下と販売数量増大の差し引きでより大きな付加価値を実現した場合や,同じく人減らしをせずにプロダクトイノベーションを遂行し,それが新規市場開拓に結びついた場合は需要は増えるだろう。
 本来アトキンソンさんの言いたいことは,「生産性向上」一本やりではなく,「賃上げによる経営者の生産性向上への動機づけ」と,それによる「新市場開拓型イノベーションの推進」なのだと思う。そういうすじみちならば賛成だ。

 なお,量的緩和でデフレが解消しないのは「人口が減っているから」というよりは,人口減を含めた将来不安により期待利潤率が低下しているから,利子率が下がっても投資が増えないのだろう。また,労働者の交渉力が弱すぎて賃上げが遅い上に,やはり将来不安から消費が増えないからでもある。後者への対策としてアトキンソンさんが述べる最低賃金の引き上げについては,いきなり1300円は無理としても方向として賛成だ。

2018年4月20日Facebook投稿を転載。
デービッド・アトキンソン「日本が「インフレになるはずがない」根本理由」東洋経済オンライン,2018年4月20日。
https://toyokeizai.net/articles/-/216990

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2018/4/29 Google+


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