2018年10月31日水曜日

「内田樹が語る雇用問題」へのコメント (2018/5/8)

「内田樹が語る雇用問題」へのコメント(内田教授の語りへのコメント3)。

4,「21世紀のニューディールが必要」論(これは賛成)
 内田教授は,「すべての企業が人件費カットに成功したら、短期的には利益が出ても、長期的には巷間に貧困者・失業者があふれかえって、購買力そのものが失われる。国内マーケットが縮小して、商品が売れなくなれば、国民経済は立ち行きません」(記事3)と言われる。また,「このまま経済を市場に丸投げしていれば、雇用崩壊、失業者の増大、階層の二極化、そして近代市民社会の崩壊と「中世化」という道筋を人類はたどることになる可能性が高い」(記事3)とも言われる。これから市場化・資本主義化する余地がある途上国はとにかく,先進国についてはそうした恐れが確かにあると私も思う。内田教授は,「自己責任で貧乏になった人間を税金で支援する謂れはない、と」(記事3)言う見地に異を唱え,「21世紀のニューディール政策」が必要だと僕は思っています」(記事3)と言われる。ここまでは,私も賛成だ。

 しかし,ここから雇用を拡大する政策や制度改革の話が出るのかと思ったら,そうではない。

5.「やりたいことをやりなさい」論
 内田教授は,インタビュアーの「これから社会に出ていく若者たちはどう備えたらよいのでしょうか」という問いに対して,「この状況下で若い人に告げるべき言葉としては、「やりたいことをやりなさい」ということしかありません」と個人の選択の問題に切り替えてしまう(そういう風に水を向けるインタビュアーにも問題があると思うが)。そして「若い人には仕事は世の中に無数にあるということを伝えたいですね。無数にあるけれど、一つ一つの求人数は少ない。そういう求人情報は若い人たちのもとには届かない。求人と求職をマッチングするシステムがないからです」(記事3)という。

 ついでに「「Tシャツと半ズボンとゴム草履でできる仕事だったらなんでもいい」とか、そういうのって実は結構あると思いますよ。僕は神戸女学院大学に就職して最初の授業の時に、ツイードのジャケットを着て、ダンガリーのシャツを着て、黒いニットタイをして眼鏡をかけて教壇に立ったんですけれど、後から考えたら、あれはインディ・ジョーンズが冒険の旅から戻って大学で考古学の授業をしている時の恰好だったんです」と意味不明の自慢を始める。まるで,自分のような気概がない若者はだめだと言わんばかりに。

 あげく「若い人たちは何も不安に感じることはないと言いたいです。もちろんある種の製造業やある種のサービス業は、機械に取って代わられるかも知れませんけれど、人間の微細な感覚や、黒白のはっきりしないグレーゾーンでの判断力とか、原理的には解けない問題を常識で解くというようなことは人間にしかできない」(記事3)と説教するのだ。

 これは理論的に古めかしい間違いだ。自己責任でない失業があるのは,有効需要が不足しているからだ。ならば,政策や制度を変更することによって需要を増やし,雇用機会を作らねばならない。「ニューディール政策」と言うなら,普通はそういうことになるはずだ。いくら「人間にしかできない」仕事があっても,それが有効需要として現実化しない限り,非自発的失業は解消しない。マルクスは19世紀の昔から,ケインズは1930年代からそう言っているのだ。内田教授はマルクスを読むことを若者に奨励していたはずだが,これはいったいどうしたことか。

 内田教授は失業の要因として,求人と求職がマッチングできていないということしか語っていない。需要が不足しているのなく,単に需要と供給が出会っていないというのだ。これなら,労働市場を完全にすれば失業はなくなる。政府がやるべきことは,有効需要創出ではなく,ミスマッチをなくすために情報流通をよくし,マッチング機会を増やすだけでよいことになる。内田教授は「市場に丸投げ」を批判しているが,マルクスやケインズのように労働市場に本質的弱点があって非自発的失業が生じると指摘しているわけではないのだ。

 結局,内田教授は,自己責任論を否定しているようでいて,記事3のタイトルのように「やりたいことをやりなさい 仕事なんて無数にある」と説教されている。それでは,きちんと探しても見つからなかったら,結局は若者の自己責任だよと言う議論になってしまわないか。

内田教授の語りへのコメント1
https://riversidehopearchive.blogspot.com/2018/10/201858_31.html

内田教授の語りへのコメント2
https://riversidehopearchive.blogspot.com/2018/10/201858_23.html

記事3 内田樹が語る雇用問題――やりたいことをやりなさい 仕事なんて無数にある
「人口減少社会」を内田樹と考える#3
http://bunshun.jp/articles/-/7167

2018/5/8 Facebook
2018/5/10 Google+


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