加藤弘之『中国経済学入門』。何とか通読したが,こちらに論評する力がない。「クリアーな制度でなければ発展しない」というパラダイムに対して「そうとはかぎらないじゃないか」という中国の事実を突き付け,「曖昧な制度」が発展を媒介しうるというしくみを示しているところはよくわかった。それは本書の最大の功績だと思う。
しかし,例えば日本も欧米から見れば曖昧な制度の社会だが,おそらく中国と全く背景が異なるだろうことをどう理解するかとか,包と請負一般とはどう違うかとか,頂上に国有資産監督管理委員会が座っている株式会社と,頂上が財閥家族の古典的コンツェルンとはどう比較すべきかとかいう問題を考え出すともやもやする。
つまり,「曖昧な制度」を主流パラダイムへの「アンチ」として出す分にはクリアーだが,「学」として積極的に規定して,他の社会と対比可能なところまで持っていこうとしたときに,より大きな困難点があるのではないだろうか。ただ,単にこちらが不勉強で,本書に出てくる用語を見ても,中国研究者だったらぱっと頭に浮かぶであろう光景が浮かばないためによく理解できないのかもしれない。
いずれにせよ,以前,『進化する中国の資本主義』を読んで「中国は資本主義だ」と割り切る踏ん切りがついた私としては,今後も加藤教授の研究をフォローしたい。
加藤弘之[2016]『中国経済学入門』名古屋大学出版会。
2016/4/4 Facebook
2016/4/17 Google+
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