2018年10月22日月曜日

ベトナム中部における魚の大量死第8報:ベトナム政治に影響し得る3つの回路 (2016/5/23)



 ベトナム中部における魚の大量死問題第8報。この問題は,ベトナム政治をどこまで,どのように動かすだろうか。フォルモサ・ハティン・スチール等に対する検査の結果はまだ出ておらず,その他政府はこの問題で表立った動きを見せていない。しかし,政治変動につながるようなきっかけは3つほどそろっている。

*環境破壊に抗議するデモは,大規模ではないが継続されている。これに対して警察は参加者に対する拘束や暴力など抑圧姿勢で臨んでいる。また,国営メディアは,抗議行動の背後に反政府組織Viet Tan (Vietnam Reform Party)がいると非難している。

*昨日5月22日に国会議員選挙の投票が行われた。ベトナムは共産党一党独裁であり,候補者のほとんどは党の推薦を受けている。しかし,国会の権限は近年強められている。直接選挙であり,党の推薦を受けない候補が11人いるほか,500の定数に対して870人が立候補している。またベトナム国会は年に2回,それぞれ30-40日開催される。単純な比較は慎むべきかもしれないが,間接選挙で年1回しか開催されない中国の全人代に比べると議会らしさがあり,世論を反映した行動をとる可能性はある。

*アメリカのオバマ大統領が本日23日から25日までベトナムを訪問している。魚の大量死問題が外交上の話題となるかどうかが注目される。
 フォルモサ・ハティン・スチールは,排水は処理していて合法だと主張し,また「魚やエビを採るか鉄鋼業を育成するかだ」と言い放った管理者は解雇して謝罪したが,それ以後,自らの立場について積極的広報はしていない。

 劇的な変化は生じていないが,引き続き注視が必要だ。

Unexplained fish deaths disrupt VIetnamese votte, Deutsche Welle, May 20, 2016.
http://www.dw.com/en/unexplained-fish-deaths-disrupt-vietnamese-vote/a-19270746

「共産党支配のベトナム 国会議員選挙 独立系の議席確保に注目」NHK,2016年5月22日(リンク切れ)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160522/k10010530681000.html

Obama arrives in Vietnam, Viet Nam News, May 23, 2016.
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160522/k10010530681000.html

川端「市場経済移行下のベトナム鉄鋼業」日本語版
http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR14-9.html

N. Kawabata,The Vietnamese Iron and Steel Industry in Transition to a Market Economy
https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=4577&file_id=18&file_no=1

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