東北大学における非正規職員雇い止め問題,その後。東北大学は,有期雇用の非正規職員(準職員・時間雇用職員)を,雇用期間5年とする就業規則に基づき,平成30年3月から雇止めするという方針は変更しなかった。そのかわりに提案されたのが「限定正職員制度」である。大学本部または部局による審査や業績評価を経て採用される,「業務限定」または「目的限定」の職員である。労働時間は色々であり,正規職員に準じた待遇となる。業務限定職員は期間の定めのない雇用であり,目的限定職員は,プロジェクト予算等で雇用されるため,予算の終了・職務消滅とともに契約が終了する。採用数は限られるので、雇い止めがなくなる訳ではない。
限定正職員制度は,それはそれであったほうがよいのだが,問題は,労働契約法に基づく無期転換は一切行わないとしていることだ。これでは,いかにも無期転換を行わないために限定正職員制度が持ち出されたと取られても仕方がない。
案の定,宮城労働局は1月末から昨日3月17日に至るまで3回も啓発指導を行っている(シェア先。東北大学職員組合のサイトによる)。
・労働契約法第18条に基づく無期転換を回避する目的での雇い止めは好ましくないこと。
• 労働契約法第19条によって、反復更新してきた労働者を雇い止めすることは法に抵触する恐れがあること。(啓発指導にとどまらない法的リスクがあること)
• 今後、反復更新されている労働者から個別の訴えがあれば文書での指導もありうること。
啓発指導には強制力はないが,大学の対応が労働行政の印象を相当悪くしていることは否めない。今後の展開は色々あり得るが,予断を許さない。少なくとも,大学側が「以前から就業規則で雇用期間は5年限度と定めているのを守っているのだから,労働契約法逃れではない」と言っているのに労働局が納得していないことは注目すべきだ。「労働契約法第18条に基づく無期転換をまったくやらず,かわりに人数を絞って限定正職員制度というのは,あまりに露骨で,法の趣旨に無理解である」とみなされている可能性がある。
私は研究科運営会議のメンバーであり管理職であるが,それにしても大学本部の提案はすじが悪かったと思う。これまでも述べてきたが,以下のようにすべきだったのではないか。
・通算5年を超える準職員・時間雇用職員は,従来と同一労働条件で契約をそのまま無期化する。
・ただし,就いている職務が平成30年4月以後は継続しない場合,継続はするが職務存続期間が明らかに限定されている場合は別途の扱いとする。
・職務ベースの雇用であることを明確にし,本人の意思に反した配置転換や転勤は行わない。空きポストがあった場合には学内公募を行うなど,本人の希望による昇進や配置転換の機会をつくる。
・職務が縮小・消失する場合には労働契約変更による勤務時間の短縮や,解雇がありうることを労働条件において明示する。
しかし,組合との交渉記録を読むと,大学側は「無期契約の労働者に対して解雇することはできない」という通念からまったく動かないように見える。これは一見すると雇用を守っているように見えるが,その結論は「だから非正規の無期転換はできない」なのだ。
ここは重大だ。「とにかく,無期契約の労働者は解雇しない」という日本的雇用慣行を貫くことが,「だから無期雇用の労働者は増やさない=短期雇用しか増やさない」ことでもあり,かえって非正規の雇用を不安定化してことが,はっきりとわかるからだ。このことは東北大学に限らない。企業でも今,起こりつつある問題なのではないか。
労働契約法を守り,不安定な有期雇用を減らして無期雇用を増やそうとすると同時に,もはや高成長が期待できない日本で企業経営の合理性を守ろうとするならば,職務をベースにした雇用を広げるしかない。意図に反した配置転換や転勤は命じられない代わりに,職務が消失する場合の解雇は普通にあり得るという慣行をひろげるしかない。労働契約法が示している雇用改革の方向性はこのようなものではないのか。安倍内閣の働き方改革にも野党からの対案にも,この論点が十分入っていないことには,私は危惧を覚える。
東北大学職員組合「宮城労働局、東北大学に対して指導を行う」2017年3月17日。
東北大学における非正規職員雇い止め問題についての見解(2016年7月24日facebook, 7月25日Google+)
限定正職員制度は,それはそれであったほうがよいのだが,問題は,労働契約法に基づく無期転換は一切行わないとしていることだ。これでは,いかにも無期転換を行わないために限定正職員制度が持ち出されたと取られても仕方がない。
案の定,宮城労働局は1月末から昨日3月17日に至るまで3回も啓発指導を行っている(シェア先。東北大学職員組合のサイトによる)。
・労働契約法第18条に基づく無期転換を回避する目的での雇い止めは好ましくないこと。
• 労働契約法第19条によって、反復更新してきた労働者を雇い止めすることは法に抵触する恐れがあること。(啓発指導にとどまらない法的リスクがあること)
• 今後、反復更新されている労働者から個別の訴えがあれば文書での指導もありうること。
啓発指導には強制力はないが,大学の対応が労働行政の印象を相当悪くしていることは否めない。今後の展開は色々あり得るが,予断を許さない。少なくとも,大学側が「以前から就業規則で雇用期間は5年限度と定めているのを守っているのだから,労働契約法逃れではない」と言っているのに労働局が納得していないことは注目すべきだ。「労働契約法第18条に基づく無期転換をまったくやらず,かわりに人数を絞って限定正職員制度というのは,あまりに露骨で,法の趣旨に無理解である」とみなされている可能性がある。
私は研究科運営会議のメンバーであり管理職であるが,それにしても大学本部の提案はすじが悪かったと思う。これまでも述べてきたが,以下のようにすべきだったのではないか。
・通算5年を超える準職員・時間雇用職員は,従来と同一労働条件で契約をそのまま無期化する。
・ただし,就いている職務が平成30年4月以後は継続しない場合,継続はするが職務存続期間が明らかに限定されている場合は別途の扱いとする。
・職務ベースの雇用であることを明確にし,本人の意思に反した配置転換や転勤は行わない。空きポストがあった場合には学内公募を行うなど,本人の希望による昇進や配置転換の機会をつくる。
・職務が縮小・消失する場合には労働契約変更による勤務時間の短縮や,解雇がありうることを労働条件において明示する。
しかし,組合との交渉記録を読むと,大学側は「無期契約の労働者に対して解雇することはできない」という通念からまったく動かないように見える。これは一見すると雇用を守っているように見えるが,その結論は「だから非正規の無期転換はできない」なのだ。
ここは重大だ。「とにかく,無期契約の労働者は解雇しない」という日本的雇用慣行を貫くことが,「だから無期雇用の労働者は増やさない=短期雇用しか増やさない」ことでもあり,かえって非正規の雇用を不安定化してことが,はっきりとわかるからだ。このことは東北大学に限らない。企業でも今,起こりつつある問題なのではないか。
労働契約法を守り,不安定な有期雇用を減らして無期雇用を増やそうとすると同時に,もはや高成長が期待できない日本で企業経営の合理性を守ろうとするならば,職務をベースにした雇用を広げるしかない。意図に反した配置転換や転勤は命じられない代わりに,職務が消失する場合の解雇は普通にあり得るという慣行をひろげるしかない。労働契約法が示している雇用改革の方向性はこのようなものではないのか。安倍内閣の働き方改革にも野党からの対案にも,この論点が十分入っていないことには,私は危惧を覚える。
東北大学職員組合「宮城労働局、東北大学に対して指導を行う」2017年3月17日。
東北大学における非正規職員雇い止め問題についての見解(2016年7月24日facebook, 7月25日Google+)
2017/3/23 Google+
0 件のコメント:
コメントを投稿