2018年10月31日水曜日

南北首脳会談の映像を視て,歴史と個人について思う (2018/4/29)

南北首脳会談。何より戦争を避けたいという観点からは,そしていまの北朝鮮の政治体制を与えられた条件とする下では,可能な限り最善の進展がもたらされたと思う。

 様々なニュースを見たが,もっとも印象的だったのは文大統領を金委員長が二人きりで会談する,この映像だった。政治も経済も,社会をつらなく大きな見えない集合的な力によって動かされているが,それは一つ一つの交渉や対話の積み重ねからなるものだ。また,見えない力の発動も,最後には一人一人の行動を通して現実化する。人は歴史に翻弄されながら歴史をつくる。制御しがたい力に取り囲まれながらも,いま,一人の自分と,目の前にいる相手との限られたやりとりから未来を生み出そうとする。それ以外に道がないからだ。この映像では,どちらかというと文大統領が懸命に語りかけ,金委員長が,時折うなずきながら考えているように見える。このやりとりが実を結びことを祈らずにはいられない。

 板門店宣言は南北の平和と軍縮を約し,朝鮮戦争終結に向かって前進した。ただし,核兵器をめぐる北朝鮮の認識は質的には変化していない。朝鮮半島の非核化が理想であり,しかし自身の体制維持のためには核兵器が必要であり,すでにある核兵器を無条件で廃棄したりはしないというものだ。ここからはさらに高い壁がある。そして,核兵器問題のみならず,朝鮮戦争終結問題,統一問題,北朝鮮の対外開放などが絡む。これまでは学生時代に学んだ核抑止力や日米安保をめぐる政治の論理を元にコメントしてきたが,ここからは朝鮮半島の現代史についてもっと勉強しなければコメントすることができない。
「南北首脳が2人きりで“会談” 散策に記念植樹も(18/04/27)」ANNNewsCH,2018年4月27日。
https://www.youtube.com/watch?v=Mg1vbzfQkGE

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