2018年10月28日日曜日

経済政策としての特区の本質と,加計学園問題から見る運用の問題点 (2017/06/24)

 私は大学人だが獣医学部増設の是非について明確な判断ができないので,加計学園問題にあまり発言しなかった。しかし,経済学者として何かもやもやした気持ちがあるのを禁じえなかったのだが,今日,この記事(「獣医学部、今治以外にも=日欧EPAの来月合意を-安倍首相」時事ドットコムニュース,2017年6月24日)でその正体が分かった。
 「特区」とは規制に例外を作ってでも競争を通して創意工夫を促し,イノベーションを刺激するものではなかったのか。
 私は特区に反対ではない。その証拠に,次世代自動車開発を促進する仙台市の特区指定を支持する論文も書いている(※)。しかし,特区は競争を促進するものでなければならない。ある条件を満たすものなら誰でも自由に参入し,市場で競い合ってイノベーションを起こせる場所でなければならない。
 加計学園問題における政府の間違いは,まさにここを踏み外したことにある。1つの主体だけに参入を認め,それが創意あるものかどうかは行政が審議して決めるというのでは,まるっきり許認可行政である。それは自由競争と程遠いどころか真逆である。市場でなく,行政に評価してもらって特別待遇を得る。果ては,安倍総理に評価してもらったのではないかと疑われているわけだ。これは規制緩和ではない。市場に評価してもらうという話ならば,そもそも総理の意向がどうのという話にすらならなかったはずだ。
 民進党は,特区の新たな運用を停止せよと主張した。馬鹿にする人もいるが,暫定措置としては正しい。しかし,その先に対案が必要だ。その先で行うべきは,特区は,地域を指定したうえで,客観条件を満たせば誰もが参入して競い合えるように運用しなければならないということだ。行政が審査して1社・1法人だけを参入させるような運用は禁止すべきである。ごく少数の参入しか認められなさそうな分野には,特区というしくみを使うべきではなかったのだ。

川端望「東北地域発イノベーションによる次世代自動車開発」(東北大学大学院経済学研究科地域産業復興調査研究プロジェクト編『震災復興は東北をどう変えたか:震災前の構造的問題,震災から5年目の課題,これからの東北の新たな可能性』南北社,2016年)。

2017/6/24 Facebook
2017/8/3 Google+

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