2018年10月30日火曜日

部活動顧問の負担を解決するためには「タダ働きは絶対に許されない」を根本に据えるべきだ (2017/12/4)

 内田教授は(「部活動は教員の仕事か? 中教審「中間まとめ」に期待すること」の中で),部活動顧問の過重な負担に苦しむ教員を救う現実的な道として,「時間外に及ぶ部活動の命令はできない」「部活動は本来的業務ではない」ことを明確化するのが有効だとしている。しかし,それでは解決しないのではないか。というのはわが日本社会のパターンとして「だから命令でなくお願いしているのだ」「本来業務ではないので給特法で禁じられた残業ではない」「だから手当も払わない」ということになり,「教員との合意のもとでボランティアとして行ってもらっている」という名目のサービス残業になるのではないか。これでは,内田教授の意図とは逆に,今の状態を追認することになるのではないか。

 私は逆の方向に解決の道があると思う。部活動顧問は明らかに仕事なのである。したがって残業であり超過勤務である。「公立校の教員に対して、時間外労働を命じないことならびに時間外労働の手当を支払わないこと」給特法で残業は禁じられているから,部活動顧問は違法である。よって法を守るためには,部活動の大部分は廃止するしかない。

 それはいくら何でも無茶だという話になるだろう。ならば,道はただ一つ。残業させるのだから,残業代を払うことである。つまり「公立校の教員に対して、時間外労働を命じないことならびに時間外労働の手当を支払わないこと」を定めている給特法を廃止すれば,それでよいのである。私は,なぜ公立学校の教職員組合が給特法にあまり反対しないのかわからない。制定時に何かの意義はあったのかもしれないが,今この瞬間果たしている役割は,事実上の超超超ブラック労働法であり,不払い残業公認法に過ぎないと思う。どなたか反論があれば聞かせていただきたい。

 もちろん,給特法廃止だけで一気にすべては解決しない。残業代をもらえることと,部活動顧問という労働が減ることは別だからだ。残業代はたくさんもらえるが,いままでどおりに忙しいということは起こり得る。

 しかし,それでも事態は確実に改善すると私は思う。なぜかと言えば,このご時世,公立学校と地方公務員の人件費財源も逼迫しており,残業代の財源も限られるからだ。部活動顧問の労働により人件費財源がひっ迫すれば,各自治体は真っ青になり,いやがうえにも残業を減らさざるを得なくくなるだろう。国家公務員と異なり地方公務員は労働基準法が適用されているから,超過勤務については,実態に即して割増賃金を払わねばならないのだ。

 それでも部活を縮小せずに不払い残業が強要されたらどうするか。教員やその組合が労基法違反で訴えればよいのである。いまは一方で部活動顧問の業務性がはっきりせず,他方で給特法があるために,それができない。しかし,不払い残業であれば訴えることはできるし,勝訴の確率は高い。

 国民世論の反応も考えてみればいい。先生を休ませろ,いや部活も大切だから働かせろ,では教育学上の水掛け論になり,価値判断を争わねばならない。しかし,私の意見では,これは本来そんな話ではない。「タダ働きは不当である」という話なのだ。いかに保守的な世の中と言えど,左右を問わずほとんどの人がこれには同意する。これならば,世論は教員に味方する。

 結論。私は,部活動顧問の負担に関しては,教育のあり方を主眼とする話をただちに中止し,「タダ働きは絶対に許されない」ということを根本に据えて改善を図るべきだと考える。そのために,給特法を廃止するのが相対的に最善の道だと思う。

内田良「部活動は教員の仕事か? 中教審「中間まとめ」に期待すること」Yahoo!ニュース,2017年12月3日。

2017年12月4日 Facebook

2018/10/30補足
 2018年になってから,内田良教授は給特法の持つ問題に,それまでより強く注目するようになった(※1)。よって私は,この記事を書いた頃よりも内田教授の意見を支持できるようになった。

内田良「教員の9割「残業代ほしい」 若手に顕著 教員の「意識」に迫る」Yahoo!ニュース,2018年10月29日。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ryouchida/20181029-00102199/

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