2018年10月15日月曜日

河野龍太郎「日銀緩和中毒が招いた財政規律の喪失」について (2014/11/23)

 私は河野氏の書いたものをそれほど読んでいないし,彼の主張が首尾一貫しているかどうかもよくわからない。

 しかし,財政規律に関する限り,河野氏の現状認識が正しい可能性を検討すべきではないだろうか。マクロにはうといのだが,シェア先の記事を読んで危機感を抱いた。以下,間違っているかもしれないが,選挙前の大事な時期でもあるので考えをまとめてみたい。

 河野氏の現状認識が正しいとすると,日銀がやっている異次元の金融緩和は,もはやデフレ脱却=緩やかなインフレ下の景気回復のためだけではないということになる。国債累積による長期金利上昇圧力を緩和するためにもなされているということだ。それは裏返すと,政府に,本来はもう断念しなければならない財政の拡大,国債のさらなる発行を可能とする。黒田総裁個人は政府に向かって「追加の金融緩和で景気を援護するから消費税は増税して財政を立て直せ」と言ったつもりだったのかもしれない。しかし,実際に安倍首相がやったことは消費税増税の先送りと国会解散だ。他方で法人税減税が必要だとも言っている。すると,財政はますます悪化し,再び長期金利上昇=国際価格下落の圧力が高まるので,日銀はさらに国債を購入して金融緩和に踏み切らざるを得ない。

 これでは,国債価格を支えるために低金利にし,それに甘えて国債をまた発行して日銀に購入させてしまい,またその国際価格を支えるために低金利を維持して……という悪循環だ。行き着く先は,財政の完全な破たんによる国債デフォルトか,あるいは制御不可能なインフレーションで経済を混乱させながら国債の返済負担を軽くするという道だ。資金の海外逃避による極端な円安,輸出競争力改善効果を上回る,購買力低下による経済停滞もありうる。アベノミクスが,当初の意図を超えて,この悪循環の道に踏み込んでいるとすれば,ことは重大ではないか。

 悪循環が起こっているとすれば,その原因は,金利を徹底的に下げ,国債を発行し続けて財政を拡張しても,十分に景気が回復しない,かつ/あるいは,回復の利益を受けられない人々の不満が静まっていないところにある。その結果,税収が増えず,かつ/あるいは財政を引き締めることができず,国債増発をやめられない。

 悪循環から脱するための選択肢の一つは,金融緩和を中止し,財政引き締めに転じることだ。しかし,これでは弱々しい景気回復の動きをくじくことになるので,あまり急激にやるわけにもいかない(※)。そうでなければ,景気回復のもっと効果的な道を見つけるしかないだろう。現実的には,無駄な支出は減らし,景気回復に必要な支出は増やして,全体としては財政赤字が増えないように何とかバランスさせるというくらいしか考えられないので,何が無駄で何が必要かを,大盤振る舞いはできないという制約下で見直すことだ。そして,今よりも企業が喜んで投資し,かつ/あるいは個人が喜んで消費に支出するような将来展望を示さねばならない。総選挙で問われるのは,こうしたバランスと方向性の中身をいかに示していくかだと思う。

※「マイルドインフレ下の景気回復が十分になるまで金融だけ緩和し続け,財政は引き締めろ」という政策論があることは知っている。しかし,この考えが「財政政策は効かないものだ」という理論的前提をとっているならば,およそ現実に合っているとは思えない。また,金融緩和を続けながら自民党政権に国債発行を我慢しろと命じるのが政治経済学的に現実的と思えない。
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKCN0J40F020141120?

2014/11/23 Facebook, Google+

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