2018年10月15日月曜日

原朗『日清・日露戦争をどう見るか』について (2014/11/24)

 原朗教授と言えば,『日本戦時経済研究』(東京大学出版会,2013年)を初めとする,日中戦争からアジア太平洋戦争に至る戦時経済研究の第一人者である。そのため,この『日清・日露戦争をどう見るか』を書店で見かけた時,一瞬,同姓同名の別人かと思ったが,そんなことはなかった。


 「遠い昔でありながらも,明治という時代はたいへんに不思議な時代で,なぜかいつになっても人を引き付ける力を持っているように私には思われます。ただし,これだけ『明るい明治』ばかりに光があてられ続けると,やはりそこには『幻想』のようなものも入り混じってきます。明治のことを何も知らない私たちでも,いつの間にか,“なにか明治というのはとても良い時代だったのじゃないか,それにくらべて昭和というのはどうもまずかった時代だな”という感覚が知らず知らずに強まってくる,あるいは,そう考えるのが自然であるかのように思わされてしまっていく。歴史学者として私は,やはりそれは問題である,と考えています。このことが,この本で私が言いたかったことでもあります」(あとがき250頁)。


 なお,本文巻末により詳しく調べたい読者のために「私が利用させていただいた研究上の先輩の方々の素敵なご本のいくつかを次頁以降に記しましたので」と書かれている。どれどれとうっかりめくると,29ページにわたっておよそ370冊ほどの文献が並んでおり,著者の意志とは別に,研究者・院生は「このくらい読むものだよね」と諭されているようで,壮絶なプレッシャーを感じるおそれがあるから注意。でも,とても便利なリストだ。

原朗『日清・日露戦争をどう見るか 近代日本と朝鮮半島・中国』NHK出版新書,2014年。
http://www.amazon.co.jp/dp/4140884444

2014/11/24 Facebook, Google+

0 件のコメント:

コメントを投稿