2018年10月20日土曜日

高橋洋一さんの「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう!」について (2016/1/1)

・高橋さんは,政府の負債はグロス(負債だけ)でなくネット(資産から負債を引いた額)で見ろ,そうすれば負債は減ると言います。2012年の数字を見ると,グロスだとGDP比238%,ネットだと134%ですから(※),ネットだと確かに軽くはなるけれど,ギリシャよりはまし,という程度。そして,ネットで見ろという場合,資産を処分して負債軽減に充てることができるのかが問題です。

・高橋さんのように,日本銀行を政府のバランスシートの連結対象として債務返済能力を考えてよいのか。私は駄目だと思います。日銀の独立性無視です。高橋さんの言う通りとすると,日本銀行に国債を引き受けさせても自分で自分に貸しているのだから債務は増えなくて問題ない,ということになります。そんなおかしな計算はあり得ません。それをやった戦前は,悪性のインフレになり,かつ政府に財政規律がなくなって軍事費の使い放題になったわけで,その反省から戦後は日銀引き受けが禁止されたはずです。

・日銀は連結しないとして,高橋さんは資産を処分すれば十分負債を軽減できると言います。「軽減」の意味は,財政を破たんさせないという意味と,金融危機を引き起こさない,という意味の二つでしょう。
 しかし,政府の公的サービスとしては不要不急のもので,かつ処分が簡単なものがどれくらいあるかの問題です。高橋さんが示しているリンク先に行くと,政府の連結バランスシートで資産側に有価証券と現預金をあわせて148兆円はあります。しかし,年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の信託資産を含むそうですから,勝手には処分できないのではないでしょうか。有形固定資産は178兆円ですが,これは公的サービスをやめてよいのかどうか議論が必要でしょうし,実際に売ってみたところで帳簿通りの価格で売れるかどうかわかりません。この点,やはり高橋さんの見解には疑問です。

・だから,ネットで見ると,確かに危機の程度は軽減されるし,本当に無駄なものについてやめる合意があればさらに少し負債を減らせるでしょう(何をやめるかはまた政治的選択の問題で,争いになるでしょう。戦車を売れと言う人もいれば,JTの株を売れと言う人もいるでしょう)。しかし,多少売ったところで,財政危機でなくなるとは思えないのです。。

 高橋洋一「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう!」『現代ビジネス』2015年12月28日。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156

※「日本の財政危機をめぐる虚実」を参照。
http://thepage.jp/detail/20130710-00010001-wordleaf

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