2018年10月18日木曜日

藤田昭夫・男澤一郎・王建鋼・森脇亜人・美土代研究会『日本鉄鋼業の光と影』勁草書房,2014年に関するノート (2015/9/15)

藤田昭夫・男澤一郎・王建鋼・森脇亜人・美土代研究会『日本鉄鋼業の光と影』勁草書房、2014年。慶応大学の北原勇ゼミと井村喜代子ゼミの卒業生による研究会における報告と討論の記録です。報告者のうち藤田・男澤・森脇氏は高炉メーカーでの勤務経験があり、王氏は宝鋼について連作を公表された研究者で今はジャーナリストとして活躍されています。
 私にとってもっとも印象深く、研究史上重要と思われたのは、男澤一郎「日本鉄鋼メーカーの米国直接進出」でした。ミスミグループのCFOである男澤氏が旧日本鋼管に勤務されていて、子会社としたナショナル・スチールの経営に携わっていたことは初めて知りました。「20年間に及ぶ壮大な日本鉄鋼業の米国進出は、経営としては厳しい結末を迎えた」。その理由はこれまで十分に解明されていませんでしたが、氏の報告はかなりまとまった見通しを与えてくれています。米国進出失敗のトラウマ、あるいは少数の成功事例(旧新日鉄のI/N Tek, I/N Kote、神鋼のプロテック)の教訓は、その後の日本高炉メーカーのグローバル戦略に影響を与えており、いま現在の問題につながっていると思います。
 ちなみに,まだ米国進出の成否が明らかではなかった頃,高炉メーカー全体に経営参加するパターンと冷延・めっき工程だけで合弁企業を新設するパターンでの生産システム改革の難易度の違いを拙論で論じたことがありました。いま見てもそう間違っていませんが,どマニアックです。

川端望[1995]「日米合弁鉄鋼企業の生産プロセス」『季刊経済研究』18(3),89-116。


藤田昭夫ほか[2014]『日本鉄鋼業の光と影』勁草書房。

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