韓国でPOSCOに続く2番目の銑鋼一貫メーカーとなった現代製鉄が,2010年以来急速に自動車用鋼板の生産体制を確立した秘密は,これまでまったく論じられて来なかった。このテーマに初めて切り込んだ論稿だ。
この論稿を読むと,現代製鉄の技術修得経路は,1)世界標準の設備購入,2)ティッセン・クルップからの技術支援,3)現代ハイスコで蓄積した圧延・めっき工程でのノウハウと読める。これらは説得的に書かれている。たいへん参考になった。
2点,今後の研究のために論点提起したい。
ティッセン・クルップからの技術支援については,私はこれを促進する何らかの背景があったと思う。通常,ブーメラン効果がありそうなときは,同業者は新規の銑鋼一貫企業立ち上げに協力したがらない。現にJFEスチールは協力しなかった。では,ティッセン・クルップはなぜ協力したか。それは,同社が事業ポートフォリオの上で,もはや鉄鋼業は重点としていないこと,とくにアジア市場はそれほど重視していないことによると思う。だから,エンジニアリング事業に力を入れて現代製鉄に協力するのも合理的なのだ。このティッセン・クルップの戦略転換のタイミングを,現代製鉄はうまくつかんだのではないか。
この論稿に書かれていないこともあると思う。それは,現代自動車との協力,現代自動車の自動車開発に対する早期関与=EVI (Early Vendor Involvement)によって,鋼材開発に成功したのではないかということだ。このことは,韓国における自動車メーカーと鉄鋼メーカーの関係がどれほど,どのように洗練されたものになっているかを突き止める上で重要な観察ポイントだと思う。著者が今後とりあげてくれることを期待するとともに,機会があればいつか自分でも調べたいと思う。
辺成祐・朴英元 (2015)「急速に立ち上がった現代製鐵の韓国高炉事業」『赤門マネジメント・レビュー』 14(4), 243-256.
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