2018年10月18日木曜日

邪馬台国以前から「日本」? (2015/11/17)

 数年前からネットに出回っている図版が,10月9日に「マック」という人がツイートしたことでシェアされまくっている。基本は「世界最古の国,日本,すごい!」という話になっている。

 私が中学・高校で使った図説はこうなっておらず,「奈良時代」「平安時代」と区切ってあった。だから,このツイートが出回るのを見て,この図説はヘンだよなあ,普通は違うよなあと思って,大学生協で吉川弘文館の『世界史年表』を立ち読みしたら,それも「ずっと日本」になっていてぎょっとした。もうちょっと調べると,手元の『角川世界史辞典』は区切ってある。ネット検索すると,他にも区切ってあるものもあれば,区切ってないものもあるようだ。

 なぜぎょっとしたか?私が日本経済史を習った安孫子麟先生のことを思い出したからだ。先生は戦前,小学生の時に天孫降臨を初めとする『日本書紀』の記述を史実だとして教わり,「そんなわけないだろう」と思ったが,言えば怒られるので黙っていた。しかし,しばらくたってから,実は大和朝廷以前に邪馬台国というのがあって卑弥呼という女王がいたことを知り,「いるとわかっているならなぜ教えない!」と思ったことが,歴史学の道に進むひとつの動機になったそうだ。

 つまり,戦前の場合,大日本帝国政府が「ずっと日本」というストーリーをつくるためには,卑弥呼と邪馬台国は教科書から消しておく必要があった。あると「これは何だ。大和より古い国があったのか」ということになるからだ。

 この図説は,紀元前1世紀くらいから堂々と「日本」になっている。日本という国号(7-8世紀に成立)がなかったころから「日本」?大和朝廷の天皇もいなかったころから「日本」?つまり,卑弥呼の邪馬台国も,その後の空白の謎の時代も「日本」?大まかに言って弥生時代から「日本」?いったい,どこをどう押せばそうなるの?これは,戦前の帝国政府を超える,かつてない壮大なホラ話としか,私には思えない。しかし,それが,吉川弘文館を始め複数の出版社の年表に載っているわけだ。


内容はこちらでつかめる。

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