案の定,シャープも政府系ファンドの産業革新機構が救済する見通しが強まってきました。昨日も投稿したように,既存大企業,それも金融機関と異なってシステミックリスクを呼び起こすわけでもない個別メーカーの救済的再編に政府が関わることには,合理的な根拠がないと思います。再建できるというならば,民間ファンドや銀行などが「民間活力」で,「自らリスクを取って」,「市場の評価」を前に「自己責任」でやればよいことです。
このように,個別産業企業まで政府系ファンドが助けてくれるという図式が定着するとどうなるでしょう。企業は企業で,そして融資している銀行は銀行で,「政府系ファンドが救済に動いてくれるだろう」と思うから,活力ある再建をめざすための努力を怠る「モラル・ハザード」を起こします。そんな企業を公的資金で救済しても,国際競争力があって,利益を,また雇用を生み出すような存在になれる可能性は低いでしょう。また,事業再建を担う民間のビジネスが当然抑圧され,その競争力が弱まります。さらに,既存大企業の支援に資源が回される分だけ,これにチャレンジしようというベンチャーへの支援が減らされ,さらに「結局,政府は既存大企業を守るんだ」という現実を前に,これにチャレンジする企業家,投資家,金融機関のスピリット自体がくじかれます。かくして,日本のビジネス全体から革新性が奪われるのです。
したがって,こうした救済は日本の経済・社会全体のためにならないと,私は考えます。
2016年1月22日facebook投稿を転載。
「シャープ再建策、3500億円の金融支援軸に最終調整=関係筋」Reuters,2016年1月22日。
2016/1/22 Facebook
2016/1/27 Google+
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