2018年10月12日金曜日

Birger Wernerfelt, A Resource-based View of the Firm, Strategic Management Journal, Vol.5, 171-180, 1984に関するノート (2013/6/28)

資源ベース経営戦略論(RBV)の初期の論文の1つである。
 
ワーナーフェルトは、まず資源が収益性に与える影響を論じる。最初にポーターの五つの競争要因論を借りながら、参入障壁になぞらえて資源ポジション障壁というアイディアを提示する。資源ポジション障壁なき参入障壁は企業を多角化による参入者に対して脆弱にし、参入障壁なき資源ポジション障壁は、企業がその障壁から利益を売ることを妨げるとする。続いて単一市場についての具体例を、機械の能力、顧客ローヤリティ、生産経験、技術的主導性の四つについて示す。次に、多くの資源は複数の製品において利用されることに注目して多角化に焦点を当て、とくにM&Aによるそれに注目する。ワーナーフェルトは、M&Aを、それ以外の方法では市場で取引されないような資源の、不完全市場での取引とみなす。
 
次にワーナーフェルトは、ダイナミックな資源マネジメントの例を、資源・製品マトリックスを用いて示そうとする。それが継起的参入、活用と開発(exploit and develop)、飛び石(stepping stone)である。その要点は、ある市場で活動することによって蓄積された資源が別の市場でも活用狩野であること、ある市場である資源を活用して活動することが別の資源の蓄積につながることである。
 
このワーナーフェルト論文の特徴は、経済学の産業組織論としてすじがとおるように書かれているということである。そして、実践の立場から書かれているにもかかわらず、観察の立場から見ても筋が通っている。資源ベース戦略論のバックグラウンドとなるロジックの構築に多大な貢献を果たした論文であることは、納得できる。
 
とはいえ、重要な要因が捨象されてもいる。ある資源が複数の製品に利用可能であるというのはその通りである。そして、実際にある資源が複数の製品に利用可能であった場合にどのようなことが生じるかが、この論文では丁寧に説明されている。しかし、ある資源が、どの製品に利用可能であるかは、事前に完全にわかるわけではない。経営者は色々な基準でその見通しを立てて行動するが、不確実性は常に付きまとう。とすると、資源、あるいは能力の蓄積を基礎にして経営戦略の優劣を論じることについても、常に不確実性がつきまとうことになる。資源と経営成果の間に距離があり、両者が直結するとは限らないRBVでは、ここをどう考えるかが重要である。
 
資源が複数の製品に利用可能であるということに注目すれば、RBVは変化する環境に適したダイナミックな経営戦略論である。しかし、蓄積した資源が環境変化によって無価値になるリスクを抱えているという点では、あまり大きくは変化しない環境に適した経営戦略論であるとも言えるのだ。
 
この問題は、ワーナーフェルト論文では扱われていない。1990年代に登場するバーニーの研究以後の課題となったのであろう。さらに文献を読む必要がある。
 
Birger Wernerfelt, A Resource-based View of the Firm, Strategic Management Journal, Vol.5, 171-180, 1984
http://www.jstor.org/stable/2486175

2013/6/28 Facebook
2016/1/5 Google+

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