2018年10月12日金曜日

神戸製鋼所と鞍山鋼鉄の自動車用冷延ハイテン鋼板合弁事業について On a joint venture agreement between Kobe Steel and Angang Steel (2013/10/18)

神戸製鋼所は鞍山鋼鉄股ブン有限公司と合弁で、中国に自動車用冷延ハイテン鋼板(引張強度340メガパスカル以上の高抗張力冷延鋼板)の製造・販売を目的とする合弁会社を設立する。約17.5億元(約289億円)を投じて、鞍山鋼鉄所内に60万トン/年の連続焼鈍設備を設置する。出資比率は神鋼49%、鞍鋼51%。

鞍鋼の合弁パートナーはこれまでティッセン・クルップであり、溶融亜鉛めっきラインを持つTAGALという合弁企業を通して技術供与を受けていた。しかし、ティッセン・クルップが鉄鋼事業の縮小に向かい、TAGALの拡張には出資しないことを決めたと報道されている(『日刊鉄鋼新聞』)。今回の新事業について、神戸製鋼所は交渉に2年かかったと述べており(『日刊鉄鋼新聞』10月18日)、このティッセン・クルップの動きとは独自のものだったのかもしれないが、鞍鋼の側では両方をにらんでパートナー選びをしていたのかもしれないと推測することは許されるだろう。

新会社は冷延鋼板を製造するが、酸洗や冷間圧延機は持たず、圧延の後の連続焼鈍だけを持つ。また原板は鞍鋼が供給する。これは、ハイテン原版の熱延から酸洗・冷延までは鞍鋼が社内に保有する技術で可能だということ、しかし連続焼鈍が技術的なネックになっていることを示している。ここに鞍鋼の到達点と限界がかいまみえる。

この会社の主力製品は自動車用冷延ハイテン鋼板だが、地場自動車メーカーは590メガパスカルまで、日系は980メガパスカルまで使用するという。神戸製鋼としては590メガパスカル以上で3割のシェアを取りたいとのこと(『日刊鉄鋼新聞』10月18日)。見積もりとしては、現在の自動車用冷延・めっき鋼板市場が900万トン、今後5年間で1.5倍に伸びて1350万トンくらいか(『日刊鉄鋼新聞』10月17日))。日本では2005年前後の冷延ハイテン化率が40%とのことなので(田中靖・藤田栄「車体軽量化技術を支える自動車用高張力鋼板製造技術に関する展望」『JFE技報』No.16、2007年6月、1頁。ただし孫引き)、仮に同程度になったとして540万トン。このうち590メガパスカル以上が200万トン未満として、60万トン弱をとるといったところか。

営業・販売を鞍鋼が行うということも気になる(『日刊鉄鋼新聞』10月17日)。この合弁会社が行うが鞍鋼側が担うという意味か、それとも合弁会社が鋼板を鞍鋼に売リ戻す、あるいは賃加工だけして、鞍鋼が営業・販売するという意味かは分からない。しかし、日系の冷延合弁事業が日系企業への供給を狙う場合、販売を合弁企業が担うことで、自動車メーカーの厳しい購買管理にこたえることが多かったと記憶する(1990年代に調査したI/N Koteと2000年代に調査したBNAはそうであった)。その必要はないのだろうか。だとすれば、それは鞍鋼の営業能力が十分だからだろうか。それとも、流通経路に商社やコイルセンターが入って補うのだろうか。これは調べてみないとわからない。

2010年に見た鞍山鋼鉄の高炉と直送圧延の熱延鋼板工場、昭和製鋼所時代から残っている事務所の建物などを思い出した。写真は当時のもの。構内撮影はできないので公道からとった高炉。

2013/10/18 Facebook
2016/1/5 Google+



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